いま世界中でフードテックが注目されています。次世代の食を提供するフードテックは、食に関わる人であれば必ず知っておくべき技術です。
この記事ではフードテックが注目されている理由や種類、具体例などフードテックを知る上で欠かせないことを解説します。
身近でできる取り組みを考えるきっかけになれば幸いです。ぜひ、フードテックを広げていきましょう。
フードテックとは?
フードテックとはフードとテクノロジーを合わせた言葉で、IoTや科学の最新の技術を利用して食の問題を解決するためのテクノロジーです。
新しい食品の開発はもちろん、生産現場やお店の人手不足解消のための機械や生産を効率的にするためのデータ活用など様々な分野でフードテックが利用されています。
食の市場とフードテックへの投資
フードテックを理解する上で、食の市場を認識することは大切です。
*データ元…農林水産制作研究所『世界の飲食料市場規模の推計結果について』
https://www.maff.go.jp/primaff/koho/hodo/190329.html
上記のグラフは世界の飲食市場規模推移を予想したグラフです。
食は私たちの生活にとって必要不可欠なものであり今後の人口増加予想を踏まえれば、市場規模が伸びていくのは必然ともいえます。
そんな食に関わるフードテックは世界でも巨額の投資がされています。
*データ元…農林水産制作研究所『世界の飲食料市場規模の推計結果について』
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sosyutu/attach/pdf/meguji-2.pdf
日本ではまだ馴染みがないかもしれませんが、アメリカでは2022年に124億ドルも投資されています。
年別で見ればコロナ禍によってデジタル化が進んだ2021年には532億ドルと飛び抜けた投資がされています。
なぜフードテックが注目されているのか
人口増加
世界規模で人口は増え続けています。このままいけば将来的に食糧が足りなくなるという問題が起こる可能性があります。
増える人口に対して食糧を供給するためには、生産量を増やす・無駄をなくす・新しい食の分野を開拓するなど、食を改革・改善していく必要があります。
そのためフードテックの力で今までより効率的に農産物の生産を行ったり、食の安全性を高めて新しい食品を開発する動きが広がっているのです。
SDGs(貧困・飢餓の解消)
人口増加とあわせて貧困・飢餓の問題も大きくなりますし、現在でもその問題を抱えています。
先進国では食品の廃棄ロスが発生している一方、世界には満足に食事をすることすらできない人たちも存在しています。
フードテックはこうした食の不均衡をなくし、誰もが十分な食事と栄養を取れる世界を目指しています。
食に対する多様性の広がり
宗教上の理由や菜食主義、健康問題などで食べられるものに制限がある人や、より安全安心な食品を食べたい人など世界には様々な食卓があります。
そういった様々な需要を満たすためにフードテックは重要な役割を担っています。
大豆由来の代替肉の開発、AIを使った安全性の高い生産、食品を新鮮に保つ包装など食の可能性を広げています。
代表的なフードテックの種類
新しい食品の開発
最先端の技術を利用して今までにない食品の開発が可能です。
動物肉の代わりになる大豆由来の代替肉や昆虫食など、食材の再現と今までになかった原料を使用できます。また、栄養を手軽に補給できるような完全栄養食も販売されています。
特に代替肉は大手企業も参入しており、スーパーマーケットなど小売店で手軽に購入することができます。
最先端の調理機器
分子ガストロノミーと呼ばれる調理方法があります。これは、食材を分子レベルまで分解してから再構築するという調理方法です。
調理場には遠心分離機や試験管など科学の実験のような機器が並び、今までにない風味の料理をつくることができます。
また、調理自体をロボットが行うというパターンもあります。自動でお菓子を焼いたり、盛り付けや食器洗いを行います。
生産の機械化
生産の現場にも機械は導入されています。
作物に適した環境を1年中保つことのできる植物工場や、ドローンや衛生を利用した農業など機械化によって今までより何倍も効率的に生産ができるようになります。
気候に左右されず、データ・機会を用いた生産は作物の出来高を安定させ、より安全安心な原料の提供につながります。
フードテックの具体例
代替肉
前述でもあったように宗教上の理由や菜食主義、健康問題で動物の肉を食べることのできない人もいます。
しかし生きていくためにはタンパク質が欠かせません。肉を食べないことで起こるタンパク質不足を解消するために代替肉が開発されました。
代替肉とは、大豆やえんどう豆といった植物由来の肉を模した食品のことです。味、食感をできるだけ肉に近づけ、健康を意識する人でも楽しい食生活を送ることができます。
配膳ロボット
最近は飲食店で配膳ロボットをよく見かけるようになりました。
キッチンからテーブルまで店員が運ぶのではなく、配膳ロボットに提供する食事を載せてお客様のところまで運びます。
人手不足を解消するためのロボットがいよいよ実用化されてきています。今後は配膳ロボットだけでなく、調理補助などさらに機械化は進んでいくでしょう。
スマート農業・水産業
スマート農業・水産業とは、AIやIoTを駆使して行う農業や水産業のことです。
最新の技術を用いることで今までより生産や漁獲を効率化したり、人手不足解消をすることができます。
スマート農業の例として、ドローンを使用した農作物の発育測定、スマホで水田の水を管理、データを活用して生産の成功率を上げるなどが挙げられます。
スマート水産業の例としては、養殖での自動餌やり、魚種判別の自動化、ブイのIoT化、陸上養殖の実現などが挙げられます。
「次世代の食」を目指して
食品廃棄物を商品に変えるアップサイクル
アップサイクルとは廃棄されてしまうものを再利用して、廃棄前のものより価値のあるものを生み出すことを言います。
元のものより価値を上げるという点がアップサイクルの特徴です。
本来捨てられるはずだった食品廃棄物から新しく商品を作ったり、化粧品など食以外の分野の商品へ生まれ変わらせるというように新たな可能性が広がっています。
食品廃棄の削減だけでなく、新たなビジネスチャンスが生まれるのです。
データ化で安全安心な商品供給
AIやIoTなど最新の技術によって今まで目で見たり感覚で判断していた要素を数値化できる可能性があります。
例えば牛の飼育現場で牛の様子をカメラで映して自動収集、AIで牛の状態や環境を自動判別して適切な処置をするということもできます。
もちろん使用したデータは保存しておくことができますので、生産の透明性を高めて何かあった時に確認もできます。
データ化は効率を良くするだけでなく、食の透明性を高めて安全安心な商品供給を可能にするのです。
さいごに
日本のフードテック投資額は2022年で6,780万ドルです。これは投資額上位10カ国に及ばない額です。
日本ではまだ馴染みが薄いかもしれませんが、今後注目度が高まっていくことは間違いないでしょう。
食に関わる人であれば誰でもフードテックについて考え、導入することができます。将来も見据え、そろそろフードテックをビジネスに取り入れてはいかがでしょうか。
まとめ
フードテックとは?生産者から小売業・飲食店まで食に関わる全ての人必見!次世代の食に向けた取り組みを広げましょう
フードテックとはフードとテクノロジーを合わせた言葉で、IoTや科学の最新の技術を利用して食の問題を解決するためのテクノロジーです。
人口増加、SDGs(貧困・飢餓の解消)、食に対する多様性の広がりなどの理由でフードテックの需要が高まっています。アメリカではフードテック分野に2022年時点で124億ドルも投資されています。日本のフードテック投資額は2022年で6,780万ドルです。これは投資額上位10カ国に及ばない額です。日本ではまだ馴染みが薄いかもしれませんが、今後注目度が高まっていくことは間違いないでしょう。
キーワード
- フードテック
- アップサイクル
- スマート農業・水産業