企業が売上を伸ばすために新規顧客の獲得が重要視されてきましたが、最近は既存顧客をより重視したマーケティングも注目されています。
既存顧客との関係性、自分たちが提供している価値や顧客がもたらしてくれる利益を計る指標としてLTVが使われます。
この記事では、LTVについて計算方法やどのように向上させていくことができるのか、事例などマーケティングに役立つ情報をご紹介します。
LTVとは?
LTVとはLife Time Valueの略称で、日本語にすると顧客生涯価値という意味になります。
顧客がある企業を利用し始めてから利用が終わるまでの生涯にわたって、顧客が企業にどれだけの利益をもたらしているかということを表す指標です。
顧客が何回も自社の商品やサービスを購入してくれればLTVが高くなります。しかしLTVは売上に基づいた指標ではなく利益に基づいた指標のため、ただ単に売上数量を上げれば良いというものではありません。
LTVの計算式
LTVを参考にするためにも計算方法をぜひ覚えて活用していきましょう。
例えば平均購入単価が2万円、収益率20%、購買頻度12回(年間)、継続期間3年とするならLTVは14.4万円になります。
もっと厳密に計算するのであればこの式にコストを加味する必要があります。
新規顧客獲得と既存顧客フォローのコストが合わせて5万円とするなら、14.4万円−5万円となり、LTVは9.4万円です。
いまLTVが注目されている理由
消費の多様化と人口減少
新規顧客の獲得は昔と比べて難しくなってきています。その背景として、消費の多様化と人口減少があります。
買い物する場所がたくさんあり、娯楽の種類も圧倒的に増えています。そうなると消費は各お店、各プラットフォームへ分散します。
また日本では人口が減少傾向にあるため、必然的に消費者の数も減っていきます。お店やプラットフォームが多様化し、さらに人口が減っている状況では新規顧客の獲得難易度がかなり高いのではないでしょうか。
個人にフォーカスしたマーケティング
新規顧客の獲得が難しいとなれば、既存顧客の囲い込みが大切です。データ収集・分析の技術が上がったいま、消費者一人ひとりにフォーカスしたマーケティング戦略に取り組む絶好のチャンスと言えます。
個人にフォーカスしたマーケティングを行うためにも、LTVは重要な指標になります。LTVを上げるためにはどこを改善していくべきかという考えは、この先生き残るための正しいマーケティング戦略につながるからです。
業界における自社のポジショニングや市場規模ももちろん大切ですが、これからはもっと細かく、一人に対してどれだけの価値があるかということを考えていく必要があるのです。
LTVを高める方法
購入単価を上げる
1回の買い物における購入単価を上げていきましょう。
より付加価値の高いアッパーグレードの商品を購入してもらう、関連商品など目的の商品とは別の商品を同時に購入してもらうといった方法があります。
購入単価を上げるために同一商品を単縦に値上げすることは、顧客の不満に繋がるので避ける必要があります。顧客満足度はLTVの他の要素に影響するため、納得のいく買い物ができるような価格設定が大切です。
購入頻度を増やす
小売など一つひとつの商品価格が低い場合、消費者の購入頻度を増やすことがかなり大切です。
購入頻度を増やすということはお店に来てもらう回数を増やさなければなりません。そのためにも消費者がお店に足を運びたくなる取り組みが必要になります。
魅力的な商品を販売してファンを獲得したり、最新のリテールメディア戦略を実施したり、消費者がお店に来たいと思うような取り組みをしていきましょう。
顧客獲得コストを減らす
新規顧客獲得のために行なった取り組みや既存顧客のフォローにかかるコストを減らすこともLTVの向上につながります。
コストを減らすことによって取り組みが疎かになり、企業の評価が下がってしまうのは本末転倒です。DX化や無駄の削減など効率化を目指すべきところで改善を行い、適切にコスト削減を行いましょう。
また、製造コストや人件費などそのほかコストを削減しても収益率はアップするため、LTVを向上させることができます。
LTV向上のための取り組み事例
飲料メーカーの自販機用アプリ
専用アプリと連携させることによって自販機で飲み物を購入するとスタンプが貯まり、一定の数スタンプが貯まると1本無料でプレゼントされる仕組みです。
スタンプを貯めて無料で1本もらえることがトリガーとなり、購入回数アップやリピート率アップをすることができます。
また、加入すればお得に購入することができるサブスクリプションも行っています。普通に買うよりもお得になるため登録者は1,000万人を超えています。
ECにおける野菜のサブスクリプション
特にECにおいて野菜のサブスクリプションが注目されています。
月額制で定期的に野菜が届くサービスです。産地に縛られることなく好きな産地の野菜を購入することもでき、オーガニックなどこだわりの条件でも見つけやすくなっています。
お店に買いに行く必要もなくなるため、子育て中のママ・パパや高齢者にとっては買い物の手助けとなってくれます。
美容品メーカーのシャンプーのサブスクリプション
髪質に合ったシャンプーを定期的に届けるサービスもあります。
Webサイトで質問に答えることによって自分に合ったシャンプーを導き出し、後日家に届くという仕組みです。
ただ単に消費者が選ぶのではなく、髪質に合った特別なシャンプーが届くというストーリー性のあるカスタマーエクスペリエンスに長けたサービスです。
コト消費が重視される時代にぴったりのサービスで、消費者の生活の一部になれば確実にLTVは向上します。
小売企業におけるLTV向上のコツ
アップセル・クロスセル
アップセルとは、今より高いグレードの商品やサービスを購入してもらうことです。クロスセルとは、その商品やサービスに関連した別の商品を購入してもらうことです。
アッパーな価格帯の商品を販売する、関連陳列でその商品に関わるものを同時に買ってもらうなど、アップセル・クロスセルは小売でも昔から行われてきました。
最近はデータ収集・分析技術が上がっているため、より消費者にフォーカスしたアップセル・クロスセルを行っていくことが大切です。
OEM・プライベートブランド商品の販売
消費者がこのお店に来たいと思ってくれるような商品力も必要です。他社と差別化できる商品、ファンを獲得できる商品はLTV向上の力強い戦力になります。
OEM商品とは、他社に製造を依頼した商品のことで、自社のオリジナル企画として考えた商品を製造機能のあるメーカーに製造してもらうという仕組みです。
プライベートブランドとは、流通業者が自社オリジナル商品として開発した商品のことです。製造を委託するという点ではOEMと同じですが、商品の販売責任は全て流通業者にあり、ブランド力を底上げすることができます。
リテールメディア
リテールメディアとは、小売企業・流通業者が運営する店舗・ECサイトで外部向けに提供する広告のことです。
小売企業は消費者の購買データを取得することができるため、よりパーソナライズ化した広告を出すことができるようになります。
アプリと連携させることによってその消費者に適した広告やクーポンを配布する、料理のレシピやニュースなど集客につながる情報を配布するという個人にフォーカスした取り組みをすることができます。
リテールメディア自体も新しい広告市場として注目を浴びているのです。
まとめ
LTVとは?計算方法や取組み事例、小売企業におけるLTV向上のコツを解説
LTVとはLife Time Valueの略称で、日本語にすると顧客生涯価値という意味になります。
LTVは、顧客がある企業を利用し始めてから利用が終わるまでの生涯にわたって、顧客が企業にどれだけの利益をもたらしているかということを表す指標です。新規顧客獲得が難しい現状、既存顧客との関係性を良好にするためにLTVが注目されています。
キーワード
- LTV
- 顧客生涯価値
- アップセル・クロスセル